勉強会一覧 原則として1月と8月はお休みです。

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2009年の勉強会一覧(敬称略)

第201回 12/10 '09
喘息、アトピーをcarry overさせないために、小児科は何ができるのか?
大分大学医学部 地域医療支援・小児科教授 是松聖悟

○アレルギー疾患

  • 日本人の3 人に1人は何らかのアレルギーを有しているといわれ、小児期発症のアレルギー患者の6割は、成人に達しても寛解状態に至っていないといわれている。アレルギー反応を押さえ込んでいたら、生体はアレルギーを忘れていくため、成人へとキャリーオーバーをさせないためには、小児期のアレルギー疾患の管理は重要である。


○気管支喘息

  • 喘息死は年間500 人程度、思春期から若年成人に多く、ほとんどが突然の窒息で発症する。気道過敏性の増悪因子が罹病期間と受動喫煙で、喘息になってからの期間が長いほど、気道過敏性は亢進する。また家庭内に喫煙者がいると、いない人と比較したら20 倍の気道過敏性があると言われている。喘息ガイドラインに準じた標準的な喘息治療でコントロールできない症例も存在する。IL-8の高い好中球性炎症がある場合はエリスロマイシンの少量長期投与が有効である。また特に思春期の母子関係に代表される心身症としての喘息も難治性の背景として重要である。テオフィリン関連てんかんは半身性で局所性のけいれんが多いが、静脈性血管のスパスムスによるといわれている。


○アトピー性皮膚炎

  • かゆみがある、掻くという行為そのものが、アトピーの治りを阻害する最大の要因である。アトピーで、慢性的に目を掻いていると、網膜剥離を起こしやすい。スキンケアが最も重要で、保湿剤は迷わず、たっぷり塗ることが大事である。食物アレルギーに伴うアトピーに関しては、食物除去試験、誘発試験を通して抗原を確定していく。食事療法も大事だが、あまりに厳格にしすぎると、微量元素欠乏症を来たしやすい。小児期のアレルギー疾患児を、成人期に達するまで長引かせないためには、受動喫煙を含めた家庭内の環境整備、栄養管理や自律神経、親子関係などに着目しながらの患者指導が必要である。


○新型インフルエンザについて

  • 軽症の喘息児が新型インフルエンザに罹患したら重症化しやすいとの報告がある。pandemicAH1N1 ウイルスは、Ⅱ型肺胞上皮細胞に関与し、サーファクタント産生を阻害する。粘液栓を形成しやすくなるため無気肺となり、鋳型気管支炎(plastic bronchitis)の胸部X 線像を呈するケースが多い。粘液栓を作りやすい抗ヒスタミン剤や鎮咳剤、去痰剤吸入は使用しない方がよい。

臨床報告
「全国および福岡県下における新型インフルエンザの流行状況(特に重症例を中心に)」飯塚病院研修医 九十九悠太

  • 発熱を来たしてから24 時間以内に、来院時SpO2 90%以下で呼吸障害と胸部X 線上での肺炎像を呈した3 例(3 歳女児、6 歳女児、2 歳男児)を経験したが、ARDS のような最重症の肺炎に進展するケースはなく、比較的早期に軽快した。今回の新型インフルエンザの特徴として、全国における症例報告からもわかるように、季節型と異なり、短時間のうち(24 時間以内)に肺炎になりやすいことが判明した。病理学的には、新型インフルエンザ(2009 AH1N1pandemic)は、肺胞Ⅱ型上皮細胞に感染を引き起こし、サーファクタントの産生が低下することにより、肺胞が虚脱し、さらに喀啖の喀出困難から酸素化が障害されてSpO2 の低下を来たす。粘液栓による気管支閉塞による無気肺(plastic bronchitis)の像を呈する所見が多い。トリインフルエンザ(H5N1)も同様の感染パターンを呈するが、H1N1 よりは強毒性で重症化しやすいと言われている。

「当院における新型インフルエンザ入院症例の臨床的特徴」飯塚病院研修医 山岡祐衣
9 月上旬より11 月末までに入院となった44 症例のまとめ。(全例迅速検査でA 陽性、PCR で新型と確定)

  • 男/女 29 例/15 例、年齢 5.8±3.6 歳(6 歳時が最多で10 例)
  • 有熱期間3.3±1.4 日 入院期間5.4±2.0 日
  • 基礎疾患として喘息あり:20 例(45%)、基礎疾患なし:18 例(41%)
  • 合併症の割合
    • 肺炎19 例/喘息12 例/気管支炎3 例/上気道炎3 例/意識障害10 例/熱性けいれん4 例/異常言動3 例/脱水2 例
  • 検査結果(WBC&CRP)
    • WBC(/ul) 9098±4128, CRP(mg/dl) 2.6±2.3
  • 抗インフルエンザ薬使用例 43 例/44 例
  • 抗菌剤使用なし:14 例(33%)
  • 抗菌剤内服併用:10 例(23%)
  • 抗菌薬静注併用:5 例(12%)
  • 抗菌薬内服と静注共に併用:4 例(33%)

第200回 11/19 '09(第22回 筑豊周産期懇話会)

  • 「飯塚病院NICUにおける院内感染対策」山下真奈美 看護師(飯塚NICU)
  • 「未受診妊産婦の地域育児支援に向けての取り組み」西川路祥子 助産師(飯塚産科)
  • 「より効果的な電話訪問をめざして」金子あやみ 助産師(田川市立産科)
  • 「エンジンバラ産後うつ病スケール(EPDS)が高得点だった母親へのサポート経験から」安田理絵 看護師(飯塚NICU)

レクチャー:「当科における産科領域の血栓予防の試み」阿南春分(飯塚病院産婦人科)

第199回 11/6 '09(第24回筑豊感染症懇話会)
インフルエンザをめぐって 予防と治療を中心として
大分大学医学部 第二内科教授 門田淳一

○ 新型インフルエンザの疫学
スペインかぜと今回の新型(豚)インフルエンザとは抗原性が類似している。欧米では妊婦に、オーストラリアではIgGサブクラス欠損(IgG2)のある人に重症例が多いことが報告された。過去に流行したパンデミックインフルエンザの死亡率は、スペインかぜ(H1N1, 1918 年)1.74%、アジアかぜ(H2N2, 1957年)0.09%、香港かぜ(H3N2,1968年)0.15%、今回の豚インフルエンザ(H1N1, 2009年)は、全世界的には0.1%と言われている。2009年10月末現在、日本での感染者数はおよそ500万人、うち死亡者が約50名で、死亡率は0.001%程度の状況である。世界的にみて日本の死亡率は非常に低い。理由は、早期にタミフル、リレンザといった抗ウイルス薬を積極的に投与していることがあげられる。(メキシコやニューヨークでの死亡者の多くは抗ウイルス薬の投与がなされていなかったことが判明。)今回の新型は、季節型に比べ肺の末梢にまで感染し、ウイルス性肺炎を引き起こしやすく、重症化や死亡を防ぐにはタミフル、リレンザの早期投与は極めて有効である。
○ 予防としてのマスク・うがい・手洗い
インフルエンザの予防にマスクやうがいが有用であるとのエビデンスは乏しいが、感染した人がマスクを着用することは、咳エチケットとしての有用性が高いので、是非とも着用すべきである。手洗いとしては、速乾性擦り込み式消毒法が非常に有用で、手指からの除菌には抜群である。流水で洗った手はペーパータオル3枚以上を用いて手を完全に乾燥させることが肝要。塗れた手は乾いた手の100~1000倍の菌を運ぶと言われており、手指の乾燥の重要性からペーパータオルを惜しみなく使うことが感染拡大防止のポイントである。
○ ワクチンによる予防戦略
20世紀最大のパンデミックを起こしたスペインかぜによる死亡は、96%が細菌性肺炎によるものであった。細菌性肺炎の20~30%が肺炎球菌によるもので、死亡者の約70%が菌血症を併発していた事実が判明した。アジアかぜ、香港かぜも細菌性肺炎での死亡率が高い。このような状況にて、特に高齢者においては、新型インフルエンザに加え、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)を同時接種することが欧米では行われている。
○ マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン)の併用効果
実際のインフルエンザ診療に関しては、タミフル単独投与よりもクラリスロマシン(CAM)を併用した方が、ウイルスの増殖を抑制させることにより、有熱期間の短縮させ、重症化を抑制できるといわれている。CAMは、ウイルスのHA(ヘマグルチニン)に対する特異的IgA抗体を産生しやすい作用があるといわれている。去痰剤として日常的に使用されることが多い、L-カルボシステイン(商品名ムコダイン)の併用もウイルス増殖抑制作用があり、補助療法としての有用性が高い。
○ 新しい抗インフルエンザ薬の開発
現在のタミフル、リレンザ以外にも新規の抗ウイルス薬が来シーズン以降登場予定である。注射薬としてのぺラミビル(シオノギ製薬)は、タミフル、リレンザの5~10倍の抗ウイルス活性があると言われており、特に重症患者に対する単回の静注療法として期待されている。ラミナミビル(第一三共)という単回使用の噴霧薬としての新しい吸入薬も承認申請中である。(ぺラミビルとラミナミビルは、タミフル、リレンザと同様ノイラミダーゼ阻害薬。)さらにファビピラビル(富山化学)という経口のRNAポリメラーゼ阻害薬が現在臨床治験中(第3相)である。

第198回 10/15 '09
明日の診療のための低身長の診断と治療指針2009
九州大学小児科講師 井原健二

○低身長の目安

  • 日本人の平均身長は、男性170cm、女性158cm、世界で一番身長の高い国はオランダで、男性182cm、女性170cm と言われている。低身長の基準とは、現在の身長が同性同年齢の子どもと比べて-2SD以下か、10 歳までに1年間の伸びが4cm 以下で、これが2 年以上続く場合のことを言う。治療ができる低身長もあるので、早期発見・早期治療が肝要。

〇成長曲線の重要性

  • 成長に問題あるかどうかは、成長曲線を描くことがとても重要。通常、子どもの発育は、乳幼児期に急激な伸びを示し、学童期はなだらかな伸び、思春期になり再び急激に伸びてラストスパートを呈す。思春期が終わると、通常は骨端線が閉じてしまい、身長は伸びなくなりプラトーになる。

○低身長の原因

  • 病気とは考えにくいもの(体質性、家族性、未熟児出生でその後も伸びが遅い)、子どもの成長を調節するホルモンの異常(GH 分泌不全性低身長、甲状腺機能低下症、性早熟症など)、脳腫瘍(脳下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫など)、染色体の異常(ターナー症候群など)、骨・軟骨の異常(軟骨異栄養症など)、心理社会的要因(児童虐待、愛情遮断症候群など)がある。検査は血液検査(内分泌検査)とX線検査(通常左手の手根骨)を行い、成長曲線と合わせて、治療可能な低身長か否かを鑑別していく。

〇子どもの成長を左右するホルモン

  • 子どもの成長に欠かせない3 大ホルモンは成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンで、骨(骨端線、成長軟骨板)に働きかけて身長を伸ばす。成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、主に肝臓に働きかけて骨の成長に不可欠なIGF-I(ソマトメジンC)と呼ばれる物質を作らせ身長を伸ばす重要な働きをしている。甲状腺ホルモンも骨を成長させる働きがある。性ホルモンは、思春期の急激な身長の伸びと関係し、骨を成熟させる働きがある。性早熟症(思春期早発症)の場合、思春期の年齢ではないのに一時的に急激に背が伸びるが、骨が早く成熟してしまい骨端線閉鎖が早まり、最終的にはあまり伸びない。女子では、月経が始まったら身長は伸びないともいわれているが、それでも平均で5~6cm は伸びる。

〇成長ホルモン(GH)療法

  • GH 分泌不全の診断・治療開始は、負荷試験がしっかりできることを考えれば、5 歳位が妥当と思われる。できるだけ早く開始した方が大きな治療効果を期待できる。GH 補充療法は、「小児慢性特定疾患」の枠内で保険適応となる。適応疾患は、成長ホルモン分泌不全性低身長、ターナー症候群、軟骨異栄養症、慢性腎不全、プラダーウイリー症候群となっているが、最近はSGA 性低身長にも適応拡大された。SGA(Small for Gestational Age)低身長とは、在胎週数に比して小さく生まれた児が、その後も身長が伸びないままの低身長のことを言う。

〇患者教育

  • 運動、睡眠、栄養は子どもの成長発育に欠かせないものの、根本的には親の愛情が不可欠。病的ではない低身長に関する家族への説明として、背が高いから「幸せ」で、背が低いから「不幸せ」ではなく、健康であることが幸せであることを理解してもらえるようにすることが大事。

第197回 7/16 '09
皮膚感染とCA (Community Acquired) -MRSAおよびPK-PD理論での抗菌療法
北九州市立八幡病院院長 市川光太郎

伝染性膿痂疹(とびひ)の起炎菌と治療
水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌、痂皮性膿痂疹はA群溶連菌(GAS)と黄色ブドウ球菌の混合感染が多い。アトピー性皮膚炎に合併したGASはカポジ水痘様発疹症との鑑別が困難。最近、治りにくい膿痂疹が増えてきて、その多くは黄色ブドウ球菌でもMRSAが多く、表皮剥奪性毒素(ET;Exfoliative Toxin)産生株のブドウ球菌が増大している。アトピー児の難治性膿痂疹の場合、血液検査で総IgEと黄色ブドウ球菌毒素AとBの特異的IgE(RAST)を測定するとよい。
通常のMSSAの膿痂疹はCFDN(セフゾン)等が有効だが、MRSAによる難治性の膿痂疹の治療としては、ST合剤(0.7g/kg/日 5日間)内服とイソジン消毒を併用している。外用剤として、従来使用されてきたゲンタシンは高度耐性があり、最近では使用されず、代わりにフシジン酸の有用性が高い。
市中感染型CA-MRSAとは?
MRSAとは元来、薬剤耐性の黄色ブドウ球菌の事をいい、院内感染の主要な原因菌である。このような院内感染型(Hospital Acquired )のHA-MRSAとは違った市中感染型(Community acquired)のCA-MRSAが出現し、特に欧米では数年前からクローズアップされてきた新興感染症である。実際には過去1年以内に入院歴がない外来患者から分離されたMRSAを対象とし、入院患者の場合には入院後48時間以内に分離されたMRSAをCA-MRSAとしている。
CA-MRSAの特徴
CA-MRSAは、Panton-Valentineロイコシジン(PVL)と呼ばれる白血球破壊毒素を産生し、Ⅳ型のメチシリン耐性遺伝子領域(SCCmec)をゲノム上にもつ。家庭や職場などで感染が拡大していくのも従来のMRSAにみられない特徴。皮膚の接触によって感染し、感染者の多くは小児~青年期である。欧米で重要視された原因として、PVL陽性株が健康な若年層の皮膚、軟部組織への感染(せつ、癰)のみならず、まれに骨髄炎や致死性肺炎、肺塞栓症を合併しやすいことで話題になった。日本の伝染性膿痂疹の患者から分離される黄色ブドウ球菌の約20%がMRSA と言われており、このMRSA の大部分がPVL陰性のCA-MRSAで、欧米の流行例とは様相が異なるものの今後注意が必要。
PK/PD理論
耐性菌の増加を踏まえ、現存の抗菌薬をいかに科学的に使用するかということで、近年PK/PD理論がクローズアップされている。PK(Pharmacokinetics;薬物動態)とPD(Pharmacodynamics;薬力学)との関係から抗菌薬の効果を検討するものである。PKは薬物の吸収、分布、代謝、排泄といった薬物動態をみることで、感染局所での抗菌剤の濃度をみるもの。PDは体内でどのような作用(有効性や副作用)を示すかといった抗菌活性をとらえるものである。
要するにPK/PDとは、抗菌薬の「用法・用量」と「作用」の関係を科学するものである。PKとPDを組み合わせることで、「ある用法・用量で抗菌薬を投与した場合、どのような作用(有効性・副作用)を示すのか?」を予測することができ、その予測をもとに、抗菌薬の最大効果を得るため、または副作用を軽減するための適切な用法・用量を設定することが可能である。
効果に影響を与える抗菌薬の作用特性
抗菌薬の殺菌作用は時間依存性と濃度依存性の2つのタイプがある。時間依存性の薬剤とは、濃度を高くしても殺菌作用の増強なく、濃度を上げるよりは、細菌に触れている時間が重要で、時間の経過とともに殺菌作用を示すものでβラクタム系薬、マクロライド系薬、グリコペプチド系薬が該当する。一方濃度依存性の薬剤とは、濃度が高くなると濃度依存的に殺菌作用を示すもので、フルオロキノロン系薬、アミノグリコシド系薬が該当する。

一般演題「8才女児の急性心筋炎症例」飯塚病院児 高瀬隆太 先生

第196回 6/11'09
胎児心臓病スクリーニングのこつ
久留米大学総合周産期母子医療センター准教授 前野泰樹

はじめに
先天性心疾患(CHD)の発生頻度は1000出生に対し8人(重症のCHDは4人)で、先天性疾患の中では最も頻度が高い。これは染色体異常の6.5倍、神経系異常の4倍といわれている。このため、胎児心エコーによる早期発見は、重症のCHDでは出生後の児の予後に大きく関わってくる。一般産科医による妊婦の胎児エコースクリーニングから、2次~3次病院による心臓精査へ、さらには小児循環器専門医との連携が重要なカギとなる。
スクリーニングの実際
“スクリーニング”は元来、難しいものではなく簡単で、しかも短時間で終わせるべきものである。
エコー画面では、胎児の頭部が右側にくるようにし、胸部の左右の判定をしっかりできるようにすることが肝要。そしてプローブを反時計回りに90度回転し、胸郭を下から見上げるようにする感じで心臓の横断面を同定する。見落しがないように、4chamber view(右房、右室と左房、左室の四腔断面)から3vessel view(上大静脈、上行大動脈、主肺動脈の3血管)、そして3vessel and tracheo view(上記3血管と気管の同定)と順序よく、スクリーニングしていく。(慣れたらそれぞれ3段階のviewを20秒以内で確認)
4chamber viewでは、異常所見としては、単心房・単心室、左心低形成、エプスタイン奇形などがわかる。3vessel viewでは大血管転位(TGA)、3vessel and tracheo viewでは、血管輪などが異常所見として同定可能である。
TGAを見逃すな!
TGAは出生後1日以内に、みるみるチアノーゼが進み、重症化するCHDで、出生前診断が児の予後を左右する最も重要な疾患である。出生前診断が付いたら、重症CHDの手術ができる病院に母体搬送し、生後すぐに手術を行うと劇的によくなる疾患であるため、TGAは是非とも胎児心エコーでスクリーニングできるようにすべし。4chamber viewから3vessel viewに断面を切り替える際、右室から上を通って左前の主肺動脈に、左室は下を通って右後ろの大動脈に繋がる。このようにCrossするはずの血管が、Crossしないで、右が右前に、左が左後ろに走行するのがTGAである。
胎児不整脈
Mモード心エコーによる判定が可能で、放置すると心不全や胎児水腫による胎内死亡の原因ともなりやすい。心拍数が180/分以上は頻脈、100/分未満は徐脈と判断。頻脈は上室性期外収縮や心房粗動、徐脈は房室ブロックやlong QTなどが同定可能である。
まとめ
胎児エコーは身体計測だけで終わらせるのではなく、先天性疾患で最も頻度の高いCHDをスクリーニングする術を持つことが大事。医師のみならず助産師にも必要な処置となりつつあるらしい。

第195回 6/4 '09
日本脳炎ワクチンをめぐる最近の話題
国立病院機構福岡病院 岡田賢司

疫学
日本脳炎ウイルスは、西ナイルウイルスと同じフラビウイルス属に属しており、日本を含む東アジア~南アジアが浸淫地帯で、同属の他のウイルスとは棲み分けがはっきりしている。日本での発症は西日本が中心で、統計を取り始めた1950年代、ワクチンの無い時期の患者発生のピークは年間5000名近くあり、10歳代の小児が中心だったが、近年は年間10名弱の患者発生があり、年例層では40代以降の中高年世代の発症が多い。流行株は従来のⅢ型からⅠ型にシフトしてきた。
日本脳炎ワクチンの歴史
1954~66年までマウス脳由来の不活化ワクチンが勧奨接種として導入された。1995年より定期予防接種に。2005年(平成17年)5月、山梨県において重症ADEM(急性散在性脳脊髄炎)の患者発生があり、ワクチンとの科学的な因果関係は不明なものの慎重を期するため、同年7月、国は暫定的に定期接種を中止した。(ただし希望者に対しては、定期接種として接種可能とした)
ADEM
ADEMは原因としてウイルス感染後、ワクチン接種後、特発性の3つが考えられている。比較的予後はよいが、神経学的後遺症が10%程度あり。原因によらずADEMの全体としての発症は全国で年間60例程度あり、平均発症年齢は6歳と言われている。予防接種関連のADEMは、70万~200万回接種に1回と言われている。
新しい日本脳炎ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン 商品名ジェービックV)
従来型はマウス脳由来であったが、新ワクチンはVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を使った組織培養で精製したワクチンである。従来型とのRTC(2重盲検試験、非劣性試験)を行い有効性が証明された。3回の接種で100%中和抗体の上昇が確認された。副反応は発熱(10%)、局所反応(5%)で接種後3日以内に発現。
実際のワクチン接種の位置付け
この新しい「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」は、厚生労働省の予防接種実施規則における省令改正が本年6月2日に公布され、日本脳炎の定期予防接種として使用が可能となった。しかしながら新ワクチンは、定期の第1期予防接種(1期の初回2回と1期追加の1回の計3回)に使用できるが、2期に関しては使えないものとして位置づけられた。従来型ワクチンは1期、2期共に使用可能である。国としては、この新しいワクチンのAEDM発症の予測は未知数(安全性、有効性が確立されていない)として、従来型と同様、“接種における積極的な勧奨は差し控えること”の文言を追記している。とはいうものの、定期予防接種の対象者として、1期の初回接種(2回)は生後6か月以降90か月未満となっているが、これまでの積極的勧奨接種の差し控えにより、現在3歳から6歳までの児で、日本脳炎ワクチンの未接種児童については、優先的に初回2回のワクチン接種を受けることが望ましいと推奨している。

(詳細は、厚労省の「日本脳炎ワクチン接種に係るQ&A」をご参照ください。)

講演:新生児の多剤耐性大腸菌による細菌性髄膜炎の1例 飯塚病院児 吉本裕良

第194回 5/29 '09(第23回筑豊感染症懇話会)
肺炎球菌感染症とレスピラトリーキノロンの役割
琉球大学第1内科教授 藤田次郎


ただいま編集中....

第193回 4/16 '09
子どもの肥満ーあれこれー
久留米大学医療センター小児科准教授 牛島高介

 小児肥満の頻度は就学時で4~6%、肥満のピークの年齢は11~12歳で、男児が全体の11%、女児が10%と言われている。肥満児のピークの割合は、最近5年間では横ばいだが、年々中等度から高度肥満(50%以上)の児が増加している。そして小児肥満児の約半数(47%)の児が成人に移行しても肥満になるというデータが示された。この肥満もそうだが、最近の学校では、身体的、体力的、経済的にも両極端の2極化が進み、中間層がいなくなってきているという。メタボリック症候群(以下メタボ)は、内臓脂肪型肥満を示唆する基準であるが、小児肥満児の5~20%がメタボの基準を満たしている。成人のメタボは“予防”の対象だが、小児の場合は“治療”の対象になりうる。以下、肥満に伴う病態、生活指導の要点を述べる。

○肝機能障害:NAFLD (Nonalcoholic Fatty Liver Disease ナフレッド)とNASH (Nonalcoholic Steatohepatitis 非アルコール性脂肪肝炎 ナッシュ)

  • 成人肥満の約50%に肝機能異常があり、そのうち約60%がNAFLDであるという。小児肥満の場合は、10~25%に肝機能異常があるといわれているが、小児の場合、肝生検が困難なため、NASHの頻度は不明。

○睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)

  • SASの頻度は小児の1~3%、肥満児では30~40%の頻度で高率に認められる。睡眠障害だけでなく夜尿や昼間の多動、攻撃的行動、感情の変動、学業の低下など、日常生活(QOL)にも影響を及ぼしやすい。

○検尿異常(尿糖)から耐糖能異常、2型糖尿病

  • 学校検尿における尿糖陽性率は0.17%(尿蛋白陽性者は約2%)といわれているが、中学生で尿糖陽性の場合は、すでに糖尿病(DM)予備軍であり、高度糖尿の場合はDMの可能性が高いので強制介入が必要になることがあるが、尿糖陽性であっても、4人に1人は精密検査が実施されていない状況である。

○肥満指導の要点

  • 長期の休み、特に夏休みになると肥満児の体重がさらに増加する。親が仕事で不在、子どもはクーラーの効いた部屋で、ゲームし放題で、1日だらだら過ごし、冷蔵庫には食べ物いっぱいといった環境の中では、夏やせどころか、夏太りは必然的ともいえる。朝早くのラジオ体操もなくなったことがさらに肥満増加に追いうちをかけることに。指導のコツは、体重を減らすということよりも、特に夏休みに体重を増やさないことの指導が大事である。休みに入っても、早寝、早起き、朝ごはんと光を浴びて適度な運動の習慣を付けさせる。高度肥満児に対しては、栄養指導も含めた入院治療も、一時的には効果があるものの、退院後しばらくしてからのリバウンドは必ず起こりうる。牛島先生の肥満児との関わりは、外来における定期受診をいかに長続きさせるか、「体重は減らさなくてもいい、来るだけでいい」と説明しているとのこと。

第192回 3/26 '09
ヘルスプロモーションとこれからの健康教育
福岡教育大学教授 照屋博行

 “健康”が流行している日本の社会において、その中身は健康増進機器や自然食品、健康食品そして多種多様なサプリメントが氾濫し、半ば盲目的に、金に糸目をつけずに“健康”を買っている。このような現代日本は、健康の社会であって、健康な社会にはなっていない。人は健康を損ねたらとても弱い。そこに狙いをつけた○徳商法がまかり通る時代である。このような社会はとても健全とは言い難い。人はなぜ健康でなければならないのか、なぜ生きていかねばならないのかといった哲学性の欠如、健康哲学から健康科学への考え方が涵養されていなければ、健康な社会とはいえない。

【健康とは、ヘルスプロモーションとは?】

 WHO(世界保健機構)では、「健康とは、身体的に、精神的に、そして社会的に良好な状態をいい、単に疾病や虚弱が存在しないということではない」と定義している。
 ヘルスプロモーションとは、日本語訳で「健康増進」、「健康促進」というような単純な訳よりも深い意味があり、自分で自分をどう考えていくか、人々が自らの生活をコントロールし、改善できるようにするプロセスのことを言っている。

【健康教育の実践;若月 俊一(としかず)先生の健康教育に学ぶ】

 長野県の佐久総合病院の開設者である若月先生は、佐久に赴任した当時、地域住民の血圧を測ったところ高血圧の人が非常に多いのに驚いた。塩分の濃い食事が原因であることが分かったが、それを村の人たちに直接講義をしてもなかなか理解してもらえなかったという。どうしたら村の人々に理解してもらえるか、講義や演説ではなく、演劇を通して語りかけることが最も効果的であった。この演劇(教育)の実践の積み重ねが功を奏し、減塩食の浸透が可能となり、予防は治療に勝ることを実証したのである。
 若月先生を慕って東京から佐久を訪ねて来たI先生は、村人の高血圧の治療に薬(降圧剤)を使ったところ、若月先生は烈火の如く怒ったという。「薬を出しても多くの村人は買えない。薬よりも大事なものがあるはずだ。地域医療は、地域に入って、地域に溶け込み、地域に学んでいかなければ成立しない。」I先生はこの言葉を聞いて、佐久に残って若月先生と共に歩んだそうである。村人達に“なぜ”を考えさせる対話によって、健康な村づくりを実践していった。

【「心の教育」と「生きる力」】

 心の教育とは子ども達の感動する心、感性を育てる教育である。感動を音に、声に、絵に、詩にすることで芸術が生れる。キレやすかったり、非行を繰り返す青少年の背景には、幼小児期の感動体験が非常に少ないことがあげられている。
 生きる力とは、自ら課題をみつけ、課題を解決する能力のことである。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」と言ったのは徳川家康だが、戦国武将の中で最も気の長い人として知られている。しかし、若かりし頃の家康の性格、それは気の短い人だったのではないかと云われている。その転帰となったのが武田信玄と戦った三方が原の戦いで、家康は惨敗した。勇んで勝負に出て負けたのであるが、負けて相手の戦い方をしっかりと学び、早合点をする自らの性格を戒めたのである。つまり自分の短所を長所に変えたことによって、戦国の時代を生き抜く術を掴んでいった。自分で自分の生き方をどう考えるか、相手の動きを見てどう戦うかを考え、ついに彼は天下取りを成し遂げることができたのである。

【健康力とは?】

 国語、算数、理科等の教科では「学力」の育成。体育科教育では「体力」の育成、技術科教育では「創造力」の育成、健康教育では「健康力」の育成。これらの「力」は、他者が付けてくれるものではない。自らの努力で培うものである。健康も継続していくことで「力」となり、不利益なもの、邪悪なものに対して打ち克つ「力」が健康力を育てることにつながる。

【予防医学と臨床医学】

 昭和38年、日本がまだ高度成長時代の頃、当時の東大公衆衛生学の勝沼晴雄教授は、著書「公衆衛生学的接近」の中で、次のように述べている。「予防医学がこれから大きく進展するであろう。しかし予防と臨床は相対立するものではなく、相互に接近し、拮抗し、予防の柱が強固になれば、臨床の柱もより強固に進展するものである」と説いている。現在は、当時よりも医学は大きく進展しているが、これからは4本柱の医学領域が有機的な連携を保つことによって、人々の健康は支えられていく。その健康を支える4本柱とは、予防医学、臨床医学、リハビリテーション医学、そして健康増進医学である。.

第191回 2/26 '09
乳幼児の急性胃腸炎の治療 ーロタウィルス胃腸炎の経口補水療法の実際ー
つるのぼるクリニック 津留 徳

 経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)の歴史は、WHOによる1960年代後半の途上国におけるコレラの治療にさかのぼる。近年改良が進み、ナトリウムとブドウ糖の吸収が程よく調整されたものができ、軽症から中等症の脱水治療のファーストチョイスとして推奨されてきている。ORSのポイントを示す。

急性胃腸炎によい治療の9つの柱

  • 脱水の水分補正にはORSを用いる。
  • 使用ORSは低張液(Na60mEq/L,ブドウ糖74~111mmol/L)とする。
  • ORSによる脱水補水は急速に(3~4時間)行なう。
  • 食事再開は早く行ない、固形食を含む正常食とする。
  • 治療乳は不要
  • 希釈乳は不要
  • 母乳栄養児は母乳を続ける。
  • 治療中の水分喪失はORSで補正する。
  • 不必要な薬物は使用しない。

ORT(Oral Rehydration Therapy)の利点と欠点

利点:吸収経路が生理的であり補正が緩やかである。医原性の水・電解質異常が起こりにくい。脱水症の予防と進行の阻止ができる。血管確保が不要で、器具や技術を必要としない。医療費を削減でき、入院する必要がない。家庭において治療を開始し継続が可能。
欠点:急速な補正が困難である。意識障害、ショックの場合は実施できない。微妙な水・電解質の調整には不適当。管理が不十分になる恐れがある、ORTに対する正確な情報が普及していない、外来での使用が面倒。

幼若乳児の急性胃腸炎に管理に関するAAP勧告(1996年)

 脱水がなくても水様下痢便ごとにORS 10ml/kg。軽度脱水(体重減少3~5%)は4時間以内にORS 50ml/kg。中等症脱水(体重減少6~9%)は4時間以内にORS100 ml/kg。高度脱水(体重減少10%以上)は、静脈輸液(20ml/kg)、状態が安定したらORTに切り替える。
食事に関しては、下痢がみられていても患児の年齢にふさわしい消化の良い食べ物を早期に摂取することが好ましい。“intestinal rest からearly feedingへ”

ロタウイルス腸炎
罹患部位は小腸が中心。感染により小腸微絨毛の障害あり、プロスタグランディンの産生により分泌型の下痢に。白色便の出現頻度は30%程度、ロタのすべてが白色調ではない。“白色”は、胆管のジスキネジアによる胆汁の排泄障害が原因と考えられている。
ロタ腸炎の経過は、嘔吐→発熱→下痢の順が多い。発熱は概ね38度台で、軽度の肝機能障害、けいれん(約8%)もあり。
米国では、2006年からロタウイルスの経口ワクチンがスタート。ワクチン接種による費用対効果も上がり医療費削減にも貢献。

第190回 2/6 '09(第21回 筑豊周産期懇話会)

飯塚病院における呼吸窮迫症候群(RDS)症例 ー母胎ステロイドを中心にー

 飯塚病院 地域周産期母子医療センター長 原田英明

一般演題 
当院における新生児搬送例についての検討  田中クリニック 松田千穂美(看護師)他
臨床心理士による周産期母子心理支援のとりくみ 飯塚病院臨床心理室 松尾純子(臨床心理士)
KYT活動 ー当科でのとりくみー 飯塚病院産婦人科 泉 詩織(助産師)

第189回 1/29 '09
新しい小児喘息ガイドライン(JPGL2008)のポイント 国立病院機構福岡病院 西間三馨

小児気管支喘息治療・ガイドライン(以下JPGLと略)は、2000年に日本で始めて、日本小児アレルギー学会により小児独自のガイドラインとして作成された。その後2002年版、2005年版と次々に改訂され、この度JPGL2008版が新規刊行された。JPGLは小児に特化した、世界に例をみない非常に優れたガイドラインであると内外より高く評価されている。そのガイドライン作成の中心的な役割を担われている西間三馨先生にJPGL2008のポイントをお話し頂いた。
○発作強度、重症度の判定等、基本骨格はJPGL2005を踏襲する。
JPGL2005の治療指標の部分で、重症度と治療ステップを混同しがちという指摘があり、従来の間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型という症状のみの重症度は“見かけ上の重症度”とした。現在の治療ステップを考慮した重症度(ステップ1,2,3,4)を“真の重症度”とした。重症持続型の一部、難治例を“最重症持続型”とした。また「小児気管支喘息の治療目標」として“気道過敏性の改善”も盛り込んだ。(気道過敏性はテストによる評価もあるが、臨床的には、運動や冷気などの吸入によって咳、喘鳴が誘発されることをいう。)
○新たに小児適応となった薬剤の位置づけを追加検討
成人に限らず幼小児といった低年齢でも気道のリモデリングが証明され、気道炎症の改善のためには吸入ステロイドの早期導入が不可欠になってきた。
1. 吸入補助具 加圧噴霧式定量吸入器(pressurized meterd-dose inhaler:pMDI)を乳幼児に使用する場合、スペーサー(エアロチャンバープラス、オプティへラー)は不可欠であるが、従来無料で提供されていたものが保険適応になり有料化した。
2. ブデソニド吸入用懸濁液(BIS、商品名パルミコート) BISは、1991年英国において世界ではじめて導入されたが、日本ではようやく2006年9月から発売された。そしてネブライザーを使用した吸入ステロイド剤であるBISが今回のJPGL2008に明記された。2歳未満の乳児には重症度ステップ3からの基本治療に、2~5歳の幼児にはステップ2からの基本治療に組み込まれた。量的には0.25mg/日から重症の場合は1mg/日まで増量可能である。ネブライザーは一般的にはジェット式が勧められているが、メッシュ式の吸入効率の有効性が確認され、メッシュ式では0.25mg/日で十分である。
3. 吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の合剤(ICS/LABA) 成人ではICS/LABAの合剤のコンプライアンスが極めて高く、世界的には小児においても長期管理薬として合剤の使用が圧倒的に高い。JPGL2008では、年長児(6歳~15歳)の重症度ステップ4での基本治療に新たに追加された。
○ガイドラインの普及をさらに促進するために
ガイドラインの目的を達成するためには、アドヒアランスを高めるための患者教育が必要不可欠である。喘息コントロールテスト(ACT)も患者教育の一環として利用されている。また学校におけるアレルギー疾患に対する取り組みもガイドラインとして内容が強化された。食物アレルギー、アナフィラキシーショックに関しては、“エピペン”の使用が救命救急士に適応になった。アレルギー疾患は全身性疾患であり、小児の場合多くは喘息とアレルギー性鼻炎の両方を有していることが多い。一日の多くの時間を費やす学校現場でのアレルギーへの対応を今回のJPGL2008に盛り込んだ意義は大きい。
○アレルギー診療のUP TO DATE(質疑応答もふまえて)
重症難治性喘息の治療において抗IgE抗体が新薬として認可された。
呼気中NOは気道過敏性のよい指標になっており、喘息かどうかの判断、ステロイドの止め時などに有用な検査で、新たな病態評価のマーカーとなりうる。
花粉症患者に対する減感作療法が見直されてきた。将来的に喘息の合併もあり、喘息の発症の抑制も含め、経口(舌下)による減感作療法が注目されている。
DSCGはβ2刺激薬と混合して慣習的に行っているが、急性発作時に使用しても有効性は乏しい。しかしながらアンプル製剤にて清潔でしかも等張液であるため生食よりは簡便であり、急性発作時にβ2と混合して使用しても問題ない。
テオフィリンに関しては、特に乳幼児では発熱時にけいれんを起こす頻度が高く、ガイドラインの普及も影響して使用頻度が年々減少傾向にある。但し、学童以上に使用することには全く問題なし。急性発作の入院時にステロイド静注と併用することで入院期間の短縮にもつながり、テオフィリンは適材適所においてまだまだ十分に使える薬である。

一般演題:筑豊地区における乳幼児喘息治療の現状

 飯塚病院小児科 坂口万里江